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小林 明子 / Akiko Kobayashi
主任研究員
IT事業会社を経て、調査会社の主席研究員として15年以上IT市場及びデジタル技術の調査研究・分析に従事する。専門領域は、エンタープライズアプリケーション、自治体・公共向けIT・スマートシティ、先端テクノロジー・イノベーションなど。2023年8月に合同会社デロイト トーマツに入社し、デロイト トーマツ戦略研究所に参画。
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日本経済および日本企業の競争力に関する調査レポート
バブル全盛期以降の日経平均株価最高値更新、大手企業の賃上げなどのニュースが相次いでいる。こうした中、本調査では、ビジネスパーソンが日本経済および日本企業について「競争力が低い」と認識していることが明らかとなった。競争力強化に向けて重要な政策・施策のトップには「技術開発やイノベーションへの投資」「デジタル化、DXの推進」が挙がる。経済成長のために重要な技術としてはAI、次世代エネルギー・環境エネルギーの回答率が特に高い。日本経済・日本企業の競争力を向上させるためには、これらの新技術の開発や活用などを手段とした変革(DX、GX)を進めることは必須といえる。しかし、ビジネスパーソンは自身の勤務先企業を保守的と認識していることもわかった。

2024年問題の解決に向けたスタートアップへの期待 物流業編
いよいよ2024年4月を迎えた。物流業では労働時間の上限規制が設けられる「2024年問題」が喫緊の課題である。トラックドライバーの人数減少や高齢化も進んでおり、何も手を打たないままでは輸送能力が大幅に不足する物流危機に直面する。課題解決のためには物流改革が必須となり、政府も政策パッケージを打ち出し法整備や規制などの対策を進める。物量が多いのはB2B物流であること、運送業は多重下請け構造となっており中小零細企業は元請企業の意向に左右されることから、抜本的な改革のカギを握るのはB2B物流の主要なステークホルダーである大手運送業や荷主といえる。大手企業には、デジタル技術を活用した業務改革や、将来的なフィジカルインターネットの実現に取り組むことが求められる。その際、物流テックを担うスタートアップとの連携も焦点の一つとなるだろう。

2024年問題の解決に向けたスタートアップへの期待 建設業編
建設業は、2024年4月以降に時間外労働時間の規制が厳しくなり、労働時間の短縮により人手不足などの諸問題が深刻化する「2024年問題」に直面している。働き手が不足する中で、資材価格上昇、都市開発などによる需要増、インフラの老朽化などの経営環境変化に対応するためには、デジタル技術を活用した構造改革が不可欠といえる。国土交通省は、建設業の生産性向上を目指すプロジェクトとしてi-Constructionを推進し、3次元データの活用を始めとしたICT技術の積極活用を進める。建設業の事業変革、DX推進においては、優れた技術や能力を持つスタートアップの活躍が求められている。

デジタルツイン/3D都市モデルによるまちづくりの可能性
デジタルツインとは、デジタル空間上に現実の双子(ツイン)となるデータを再現し、高度なシミュレーションや分析を行うことができる技術である。これを都市に適用し、防災、まちづくりなどに活かす取り組みが進んでいる。国土交通省は3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を行うプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」を推進する。静岡県や東京都が活用する点群データも精度の高さなどの面で有益な技術となる。産官学の協業によって、自治体のノウハウ不足、費用対効果に対する理解の得にくさ、ユースケースの不足などの諸問題を解決した上で、行政のDXやスマートシティを支える標準的なインフラとして発展していくことが望ましい。 デジタルツインによるまちづくりとは

自治体のシステム標準化とガバメントクラウド移行を前に公共サービスメッシュという未来を共有しよう
全自治体が、住民情報系システムの標準化とガバメントクラウドへの移行を同時に行おうとしている。2025年度末までの短期スケジュール、コストアップになる運用費、継続する法改正対応など課題は多く、自治体やベンダーは苦慮している。政府が掲げた「コスト3割減」という目標にも疑問の声が上がる。しかし、標準化とガバメントクラウド移行の本来の目的は、少子高齢化が進む自治体の「2024年問題」をふまえ、データ連携・データ活用を実現することと考える。2026年度以降に目指すのは、公共サービスメッシュによる「スマホ60秒」という未来である。国、自治体、企業など関係者は、現在の巨大プロジェクトを推進するにあたり、この前提を共有しておきたい。

2024年は生成AIのエンタープライズでの成果獲得が焦点になる
生成AIほど劇的に登場し話題をさらった技術は他にない。1年経って熱狂のフェーズは過ぎ、技術の進歩が目覚ましく一般ユーザへの普及が進んだ反面で、エンタープライズ(ビジネスの現場)においては実装が遅れているという課題も見えてきた。生成AIの有用性を前提としつつ、2024年は実際の業務に変革を起こし成果獲得につながる技術の採用が焦点になる。

Govtechスタートアップの活躍に向けた日本版DMPへの期待
政府はデジタル・ガバメントの実現を目指しており、デジタル技術を活用し行政のサービス向上や効率化を実現するGovtech(Government+Technology)が活性化している。現状、行政のIT調達においては参入障壁の高さやサプライヤーの集中が課題となっており、デジタルマーケットプレイス(DMP)計画が進んでいる。先行するイギリスではDMP導入後に多様なGovtech企業の参画が実現しており、日本においても、Govtechスタートアップのビジネス機会増大に繋がると期待できる。そのためには、DMPの成功はもちろん、スタートアップにとっての課題解決を進めていくことが必要である。

ガバメントクラウドの採択においてはソブリン・クラウドを議論したい
政府や自治体が共通で利用するガバメントクラウドには外資メガクラウドが採択されている。2023年11月初頭時点では、デジタル庁はガバメントクラウドの選定を行っているが、要件が緩和されたことで日本企業が参入しやすくなるとして注目されている。国産クラウドが採択される最大の意義は経済安全保障にあると考察する。国が主権を持つソブリン・クラウドの議論が進められるべきと考える。

デジタル人材不足の解決なくしては日本の成長はない――社会全体での取り組みが求められる
少子高齢化が進む日本が成長を目指すためには、デジタルを活用した生産性向上が不可欠である。しかし、デジタル人材の圧倒的な不足は深刻な課題となっている。日本では特に、量の不足、技術のミスマッチ、偏在という「三重苦」の状態にある。昨今リスキリングがバズワード化しているが、どの領域でどのような人材を育成すべきか、政策の精度を高めることが求められる。IT企業、ユーザ企業、教育機関、地域それぞれに異なる人材不足の課題と有効な対応策を見直し、社会全体で取り組む必要がある。

生成AIで注目が集まる国産LLM開発競争 「日本語」のみが焦点ではない
生成AIの勃興で大規模言語モデル(LLM)の開発に注目が集まっている。多くの企業や研究所が日本語LLMの開発を進め、政府も国内での生成AI開発を促進する方針を打ち出す。日本語LLMの意義は、日本語での精度向上のみにとどまらない。安全保障上の重要性、技術育成とイノベーションの促進、カスタマイズによる企業変革への貢献にも期待できる。
