レポート

デロイト トーマツ戦略研究所の調査・研究レポートを掲載しています。

Research&Analytics

  • 2026年6月3日、欧州委員会は、半導体法案2.0とクラウド・AI開発法案(CADA)を柱とする「技術主権パッケージ」を発表した。域外の巨大IT企業(ハイパースケーラー)が欧州のクラウド市場を支配し、また域内には先端半導体の製造能力が存在しないという厳しい現実を前に、EUは公共調達に「主権」の基準を導入し、段階的な要件を設ける見込みだ。もっとも、その制度設計は、域外事業者の完全な排除を目的としたものではなく、一定の条件を満たせば市場アクセスを認める、条件付きアクセスの性質が強い。他方で、政策を支える財源は2028年から7年間の中期予算である「次期多年度財政枠組み(MFF)」の決着待ちであり、何より代替となる域内の技術基盤やそれを育てるベンチャーキャピタル市場も十分に成熟していないのが実情だ。本稿では、同パッケージの提案を読み解きながら、その実現がなぜ難航するのかを構造的に整理し、日本に向けた示唆を提示する。

  • On July 10, 2026, Deloitte Tohmatsu Space & Security LLC (DTSS) hosted a primarily English-language symposium titled "New Era of Japan-US Business Collaboration in Space." Previously, in November 2025, DTSS co-hosted a seminar with organizations affiliated with the Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) to explore the prospects of Japan's satellite observation business. Building on that foundation, this symposium invited public and private sector stakeholders from the United States to outline the latest industry trends, while exploring strategies for Japan to leverage its technological advantages and forge a new era of space business collaboration between Japan and the United States. 日本語版はこちら

  • デロイト トーマツ スペース アンド セキュリティ合同会社(DTSS)は2026年7月10日に英語を主体とするシンポジウム「New Era of Japan-US Business Collaboration in Space」を開催した。DTSSは2025年11月に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)関係機関との共催で、日本の衛星観測事業の展望を探るセミナーを開いていた。今回は米国の官民関係者に最新動向を説明してもらったうえで、日本が技術的な優位性を活かして両国による宇宙事業協力の新時代を切り開く方策を探った。English Version is here.

  • 本を読む人

    欧州のAI(人工知能)政策専門家たちによる近未来予測「Europe2031」は、AI政策に関する判断ミスが衰退を招く様相を描き出し、世界中に波紋を広げた。前回の論考ではEurope2031が提起した地政学的・経済安全保障上の課題=内容(コンテンツ)を取り上げたが、本稿ではその形式(フォーム)に焦点を当てる。Europe2031の執筆者たちは、従来の政策文書形式を排し、「SFプロトタイピング(Sci-Fi Prototyping / Speculative Fiction Prototyping)」と呼ばれる手法を用いて、政策当局者の感情と直感に刺さる物語を紡ぎ出した。生成AI、自律型AIエージェントが急激に普及・進化している現在、SFプロトタイピングをAIと融合させるアプローチは、政策立案・分析に技術革新をもたらす可能性がある。

  • 欧州のAI(人工知能)政策専門家たちが公表した近未来予測「Europe2031」が世界中で波紋を広げている。架空の欧州委員会職員とAI起業家が主人公となって未来を描く物語であることも未来予測のあり方に新たな視座をもたらした。特筆すべきは、AIをめぐる課題をイノベーション推進や規制の枠組みにとどめず、EU(欧州連合)の主権や交渉能力という地政学的観点から描写したことにある。AI主権を政治哲学上の概念にとどめず、AIを動かすための総合インフラ力である計算資源、半導体供給網やデータへのアクセス権と再定義し、具体的な課題として示した点は斬新である。この近未来シナリオは日本にどのような示唆を与えるのか。先端AIへのアクセス制限リスクや中堅国連携の可能性に言及しながら、読み解きたい。

  • 日本が産業クラスター形成を通じた「地域未来戦略」を進めるには、自治体の枠組みを超えた広域連携が不可欠である。本稿では、最先端半導体の製造拠点整備を機に設立された「北海道バレービジョン協議会(HVVA)」を分析することで、産業クラスターと広域連携を結びつける設計論を、他の地域でも応用できるものとして示す。

  • 経済安全保障がグローバルビジネスの最重要課題となる中、欧州連合(EU)では、米国に事実上独占されている決済インフラが政治的な武器(レバレッジ)になりかねないという強い危機感から、過度な対米依存から脱却し、「金融・決済主権」を確立する動きが加速している。こうした地政学リスクに対処すべく、欧州はデジタルユーロの導入や独自の決済網の構築、金融市場の統合など、自律的なインフラ整備を進めている。本稿では、EUの決済環境とEUが直面しているリスクを概観し、主権確立に向けた議論の動向を紐解く。

  • 政府は地域未来戦略において、大規模な産業クラスターの形成だけではなく、地域レベルのクラスターの創出や地域資源の活用に焦点を当てている。戦略の成否を左右するのは、外部からの大型投資のみならず、地域内の中堅・中小企業の成長となる。この点で売上高100億円規模を目標として経営者の成長意欲を可視化する「100億宣言」は、地域企業からの内発的な発展を支える政策モジュール(施策)として機能する。今後の成長戦略における100億宣言の位置付け、可能性と課題を提示する。

  • パネルディスカッションⅡの様子

    地政学リスクが高まりAIなど先端技術の急速な実装が世界的に進む一方、人口減少や生産性低迷に悩む日本は新たな「勝ち筋」を必要としている。一般社団法人デロイト トーマツ戦略研究所(DTSI)はこのほど、デロイト トーマツ グループとの共催でシンポジウムを開いた。日米から産学官の有識者を集め、日米同盟や宇宙・通信産業の視点から、成長戦略のあり方と企業が何をなすべきかを議論した。

  • 国際秩序の変容と破壊的な技術革新を背景に、日本政府は経済安全保障を重視した成長戦略の策定を進めている。柱は、戦略的な自律性と不可欠性を高め、産業基盤とサプライチェーンを強靱化することだ。その実装のカギを握るのが、世界情勢と技術の変化に対応できる地域エコシステムの構築である。本稿は、2026年6月に策定が見込まれる「地域未来戦略」を念頭に、官民連携の先行事例とされる北海道バレービジョン協議会を分析し、他地域の産業クラスター創出への示唆を探る。