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デロイト トーマツ戦略研究所の調査・研究レポートを掲載しています。

国際情勢アップデート, 米国, 日米関係, 欧州, シンクタンク, コメンタリー

ミュンヘン安全保障会議が示す「新秩序」の論理:モジュール化、包括防衛、AI台頭を補助線として

米国の第2次トランプ政権による高関税措置や国際機関からの脱退、ベネズエラでの軍事作戦によって、国際情勢は緊迫の度合いを増した。第2次世界大戦後、米国が主導してきた国際秩序が揺らぐ中、国際経済・金融の関係者の間では、世界情勢を見極めるための場として、「ミュンヘン安全保障会議(MSC)」に対する関心が高まっている。「Under Destruction(破壊の最中)」に開催された2026年のMSCを振り返り、「モジュール型の枠組み」、「トータル・ディフェンス」、「AI(人工知能)台頭」という3つの論点を整理したい。3つの論点は、MSC閉幕直後に始まった米国によるイラン軍事攻撃や、今後の国際情勢を分析するための補助線となるだけではなく、日本の政策・企業の戦略を固めるうえでもヒントとなる。

注目レポート

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  • 米国の第2次トランプ政権は2025年1月の発足後、100日間での破壊的改革を意識したかのように、矢継ぎ早に政策を実施している。100日目となる4月29日以降、政策運営が巡航速度に入るのかが注視される。「100日後」を視野に入れ、日本の企業・産業が注視すべきポイントを数回に分けて整理したい。第1回は政権が打ち出した相互関税を取り上げる。特に、非関税障壁を標的とする米国の動きに焦点を当てる。

  • 2025年度予算案をめぐり、政府・与党は衆院で修正を条件に一部野党からの合意を取りつけ、成立を確実なものとした。当初予算案の修正は29年ぶりであり、政策決定プロセスが大きく様変わりしたことは注目に値する。本レポートでは、予算案をめぐる衆院での政党間協議を振り返り、少数与党政権下においてプロセスがどのように変容したか分析する。「自民1強」から穏健な多党化へと政治トレンドが移行している中、新しい政治情勢における企業の政策渉外活動はどのようにあるべきかについても考察したい。

  • デジタルやサステナビリティ対応の重要性が増し、日本の製造業は多様な技術の組み合わせで価値を創造する必要性に迫られている。国際競争力を再び強化するためには、外部から革新的な技術を取り入れ、オープンイノベーションにより製品ポートフォリオを強化、変革することが肝要である。このような中、オープンイノベーションのパートナーとして、大学の研究成果を活かして起業するディープテックスタートアップへの注目度が高まっている。その活躍分野は、環境、エネルギー、素材、バイオ、量子、宇宙などに拡大しており、国際展開に成功すればユニコーン企業へと成長するポテンシャルも見込まれる。製造業がスタートアップ連携の新手法ベンチャークライアントモデル(VCM)を活用しオープンイノベーションを成功させるためのポイントは何だろうか。ディープテックに造詣が深いMonozukuri Ventures代表の牧野 成将氏とデロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)パートナーの木村 将之が、ディープテックの重要性やVCM適用のポテンシャルについて対談を行った。

  • 民間の団体が発行する排出枠、「ボランタリークレジット」への関心が高まってきている。環境意識の高まりから企業が自主的な温暖化対策の一環として利用しているのに加え、公的な規制の遵守にも活用可能になったからだ。一方で信頼性や質に問題があるとの指摘もある。こうした中、最も注目を集めている組織が、ガバナンス機関「Integrity Council Voluntary Carbon Market(IC-VCM)」だ。同機関は、「クレジットの信頼性に関する原則(Ore Carbon Principles, CCPs)」を定めたうえで、評価の枠組み「Assessment Frameworks(AF)」を踏まえ、CCPsに適格かどうかを審査している。適格認定を受けたボランタリークレジットは一定の信頼性が担保された存在として、市場の注目を集めると思われる。

  • 物質を構成する原子や電子など「量子」の特性を利用した量子コンピュータを取り巻く世界的な環境は近年、大きく変化した。研究開発の飛躍的な進展に伴い、各国で量子技術に関する国家戦略が策定・更新され、産業化を見据えたエコシステム形成の動きが加速しつつある。日本政府も2021~25年度の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」で、量子技術を社会経済および安全保障上の国家戦略の一つに位置づけた。基礎的な研究開発から社会実装までを一貫して推進する戦略のもと、国際連携、人材育成、社会機運の醸成など様々な取り組みが産学官で動き出している。本レポートは、技術的な視点から語られることの多い量子技術の現状を、政策的観点から検証する。量子技術開発とビジネス創出に取り組んでいる企業や、参入を計画している企業の参考になれば幸いである。

  • 自民党内で有力議員が中心となり、新しく勉強会や議員連盟(議連)を立ち上げて政治的なかたまりをつくる動きが活発化している。派閥が事実上解消したことで、政策を軸とした新しい集団がこれからの党内力学を読み解くうえで重要なファクターとなるだろう。企業は、「次の総裁・総理」の政策に直結するこうした動きをフォローし、適宜適切なコミュニケーションをとっていくことが、ポスト派閥時代においては新たに求められる。

  • ドイツ政治は、現政権の連立崩壊、議会解散、極右政党の台頭といった混迷の中にある。これらの現象は単なる政治対立の結果だけでなく、長年にわたり自由貿易体制を前提として構築してきたドイツの成長モデルの限界に起因している。中国との競争激化、ウクライナ戦争によるエネルギー価格の上昇、さらには「トランプ2.0」に代表される保護主義のリスクがこれに拍車をかけ、ドイツは、製造業依存からの脱却を含む抜本的な政策転換を迫られている。

  • 政府は経済と地域の活性化に向け、従業員2000人以下の「中堅企業」の成長を促進していく。今後は国家戦略に基づく支援策が拡充される一方で、中堅企業自体もガバナンス強靭化や自助努力が求められる。Deloitte Privateと朝日新聞社がこのほど開催した「中堅企業フォーラム」では、経済産業省の幹部や中堅企業の経営者、投資・資本市場の専門家が「中堅企業の自律的成長のカギは何か」を討議した。

  • 「賃金と物価の好循環」を実現するうえで、企業の価格転嫁を妨げるリスクが2つあることを前回のレポートで指摘した。今回は、もう一方のプレーヤーである消費者の節約志向について論じる。 本稿では節約志向を消費者物価と消費支出の増減率の差を使って定量化した結果、物価が上がれば購買点数を抑制しようとする消費者意識は依然根強いことが分かった。世代別には、賃上げの恩恵に浴した若年層の節約志向が弱まっている一方、賃上げの恩恵が乏しく教育費などの支出が重い高年齢層は節約志向を強めている。このため、今春予想される賃上げだけでは消費マインド改善は難しい。政策面では現在検討中の高校授業料の無償化などが、節約志向を中期的に薄める策として有効ではないだろうか。

  • 石破総理大臣が2025年初の訪問先に選んだインドネシアは、国際政治においてキャスティングポートを握る大国へと変貌しつつある。同国は、2022年にG20議長国、2023年にはASEAN議長国を務め、ASEANの盟主として頭角を現してきた。2025年1月には正式にBRICSへの加盟を果たし、その地位をさらに強固なものにしようとしている。本レポートでは、インドネシアが近年、国際的に注目を集めている背景を地政学的および経済的観点から概観するとともに、同国のBRICS加盟が意味することを考察したい。