世界的なカーボンニュートラルの潮流とエネルギー安全保障上の議論を踏まえて、日本政府は2023年、「GX実現に向けた基本方針」を取りまとめた。10年間で官民計150兆円超のGX関連投資を生み出すことが柱。20兆円の政府支援をテコに、民間部門を中心に130億円規模の投資誘発を目指す(図表1、2)。 しかしながら、政府支援以外のGX投資資金を民間企業がどのように工面するのかという議論はこれまで、ほとんど行われていない。政策金利の先行きが不透明な中、企業が巨額の資金調達をすれば利払いなどのリスクが大きくなる可能性がある。企業がGX投資を控えれば、150兆円の目標達成は苦しくなる。 本レポートでは、海外での内部留保を国内還流させれば税制面で優遇する「レパトリ減税」を政府が使途限定付きで導入した場合、日本企業が海外で積み上がった留保資金をGX投資に振り向ける可能性があるか考察する。その一環として2017年12月に米トランプ政権下で成立した大規模減税政策「Tax Cuts and Jobs Act(TCJA)」がどのような経済効果を生み出したかについても検証を試みる。
世界の多くの国で少子化が進んでいる。2023年には日本の合計特殊出生率が統計開始以来、最も低くなり、フランスでも第二次大戦後で最低に近い水準に落ち込んだ。こうしたなか、合計特殊出生率が改善している国として注目を集めているのがハンガリーだ。同国の家族政策を10年以上リードしたKatalin Novak元大統領と、世界的に著名な人口減少の研究者であるStephen J. Shaw氏を有限責任監査法人トーマツが招き、世界が直面する少子化と人口減少、そして日本の未来を議論した。
各国が温暖化対策を実施する際、国際競争力への影響が問題となる。ある国が厳しい温暖化対策を実施すると、産業の国際競争力が損なわれる懸念がある。同等の対策が他国で講じられていなければ、その国の輸出品が産業競争の面で相対的に不利になるからである。このような懸念に対応するために採られている様々な措置の一つが炭素国境調整措置(CBAM)である。具体的には、輸入品製造時の温室効果ガス(GHG)排出を対象とした負担を通関の際に求め、競争上の不公平是正を図るものである。EUで2023年10月に施行されたのに続き、英国が導入を決めた。さらに豪州でも、産業分野へのGHG排出の総量規制導入を受けてCBAM導入が検討されている。GHG排出を規制していない米国でも、CBAM導入の動きが議会中心に活発化し、2024年7月、連邦下院に民主、共和超党派での法案、PROVE IT Actが提案された。2023年8月に上院で提案された法案に修正を加え、改めて下院に提案されたものである。成立するかどうかは読めない部分も多いが、11月の大統領選と連邦議会選の結果次第では、議論が進展する可能性もある。一方でCBAMについては、自由貿易を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールとの整合性に関する懸念が残っており、具体的な実施に向けた課題は多い。